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【感想】「風配図」は少女たちの人生の風向きの変化を見れる

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90歳を超えてなお、新作を発表し続ける皆川博子さん。

2023年5月に発売された「風配図」は、中世ヨーロッパを舞台にした小説。

読むと、タイトルにあるように、登場人物の人生の風向きの変化を見ているような気分になりました。

このページーでは、「風配図」のあらすじ・感想を紹介します。

「風配図」のあらすじ

「風配図」の舞台は、中世ヨーロッパ。

バルト海に面した「ゴットランド島」から物語は始まります。

島に流れ着いた積み荷をめぐっておこった、船の生存者と島民との言い争い。

正しい方を神が勝たせてくれる、ということで、戦って有罪・無罪を決める「決闘裁判」が行われることに。

でも、船の生存者は負傷して戦えません。

戦うのは男がやること。女が戦うなんて言語道断…というこの時代に、代わりに戦うと名乗りを上げたのが、15歳の少女・ヘルガ。

不条理な世界・固定観念に縛られた少女たちが、自由を求めて進む様子を描いた物語です。

「風配図」の感想

「風配図」は、この一言にすべてがつまっているように思います。

「そうだね。いやなことを一杯抱えて、それでも潰れないやり方を選ばなくてはならないんだ」

引用元:皆川博子(2023年)『風配図 WIND ROSE』河出書房新社(268ページ)

「風配図」で語り手となるのは、少女と奴隷の青年。

彼らへの扱いは本当にきびしいものです。

女の仕事は家事、男に反抗したり意見を言うのは許されない。

奴隷は主の所有物。主の立場が危うくなった場合、真っ先に売り飛ばされる存在。

物語の中心となる少女・ヘルガとアグネは、理不尽な扱いを「しょうがない」と受け入れつつも、自由に生きたいと願います。

そんな2人の前に表れるのが、「ヒルデグント」という女性の商人。

亡くなった夫に代わって、商人をしているのですが、強くて賢いんです。

強くならないと、男ばかりのなかで戦っていけないんでしょうね…

ヒルデグントとの出会いで、ヘルガとアグネの運命の風向きは大きく変わります。

でも、海に出れば自由になれると思っていたのに、いやなことは減らない…

今を生きる私たちも、生きているとイヤなことがたくさん起こりますよね。

イヤなことは決してなくならないし、待っているだけじゃ誰も助けてくれない。

生きていくには、つぶれずに済む方法を選ぶしかないんですよね。

強くたくましく生きる彼らに、強さをわけてもらいました。

おわりに

「風配図」には、すっきりした面白さはありません。

読み終わったあとに、じわじわと面白さが心のなかに広がっていく物語です。

きっと本棚に大切に入れて、何度も読み返したくなるはず。

気になったらぜひ読んでみてくださいね^^

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