今回紹介するのは、パトリック・ジュースキントさんの「香水」。
「香水」は何度も読むほど好きな小説ですが、主人公には一切好感をもてない変わった小説です。
この記事では、「香水」のあらすじとオススメポイントをネタバレなしで紹介します。
「香水」について
タイトル | 香水 ある人殺しの物語 |
作者 | パトリック・ジュースキント |
訳者 | 池内 紀 |
出版社 | 文春文庫 |
ページ数 | 352ページ |
発売日 | 2003年6月10日 |
ピースの又吉さんもオススメしていた作品です。
「香水」のあらすじ
以下「香水」のあらすじです。
舞台は、18世紀のパリ。
主人公グルヌイユは、生まれつき天才的な嗅覚をもつ。
その嗅覚を用いて、パリ中を魅了する香水をいくつも作り上げていく。
ある日、グルヌイユは頂点に君臨する匂いを見つける。
匂いの持ち主は少女。
頂点の匂いを自分のものにするためなら、手段は選ばない…
形に残らない”匂い”の天才かつ殺人鬼の物語。
「香水」のオススメポイント
「香水」のオススメポイントは2つ。
- 現実と錯覚するほど匂いで充満した世界
- 主人公の天才かつ狂人っぷり
現実と錯覚するほど匂いで充満した世界
「香水」は、最初から最後まで匂いで満ち溢れています。
食事や植物の匂いはもちろん、ありとあらゆるものの匂いで作品の世界は充満。
さっぱり、あっさりした匂いもあれば、鼻にくる、ねっとりした匂いもあって、鼻は大忙し。
匂いの描写がすごすぎて、読んでいて鼻がつまるほどです。
これほど嗅覚を刺激してくる小説はめずらしいので、一生に一度は読んでおきたい本です。
主人公の天才かつ狂人っぷり
この記事の冒頭のくり返しですが、「香水」の主人公に対する好感度は個人的にはゼロです。
なのに何度も読むほど好きなのは、主人公の天才かつ狂人っぷりがすごいから。
天才的な嗅覚で魅力的な香水を自己流で次々につくりだす
「香水」の主人公グルヌイユは、生まれつき天才的な嗅覚を持っています。
その嗅覚を使って、あらゆる種類の香水をつくることになるのですが、つくり方は完全に自己流。
周囲は自分勝手なつくりかたに怒り狂いますが、出来上がった香水を嗅ぐと、その素晴らしさになにも言えなくなります。
天才的な嗅覚で魅力的な香水をどんどんつくりだしていく場面は、読んでいてとても面白いです。
匂いのためなら殺人さえも犯す
ある日、これまで嗅いできたなかでトップの匂いを見つけたグルヌイユ。匂いの持ち主は見知らぬ少女。
グルヌイユは、匂いを存分に嗅ぐため少女を殺害。その後に、少女の髪からつま先まで全身の匂いを嗅ぎ、ひとつ残らず記憶に刻み込みます。
その夜、グルヌイユが眠りにつくときの様子がコチラ。
マレー区の娘の姿、その顔やからだは、もはや覚えてもいなかった。だが、彼女の最良のものは保持していた。自分のものとした。彼女の匂いの原理を、そっくりいただいた。
引用元:パトリック・ジュースキント(2015年)『香水 ある人殺しの物語』文春文庫(65ページ)
なにがひどいって、少女の顔を覚えていないどころか、殺したことすら覚えていないこと。
好感を持てるわけがありません。それなのに、何度も読んでしまうんだから、本当にすごいやら悔しいやら…
さわやかさはゼロですが、ねっとりドロドロした空気は、読むとクセになってきます。
気になる人は、ぜひ読んで独特の世界を体験してみてください。