読むと言葉をあつめたくなる小説。
それが、「小さなことばたちの辞書」です。
この記事では、「小さなことばたちの辞書」の感想や印象に残った文章を紹介します。
目次
「小さなことばたちの辞書」はこんな話
「小さなことばたちの辞書」の舞台は、19世紀末から20世紀初めのイギリス。
女性参政権運動が行われ、第一次世界大戦がはじまる時期です。
主人公のエズメは、辞典の編纂室で働く父を持つ少女。
辞典と言葉に人生を捧げたエズメの姿が描かれた物語です。
「小さなことばたちの辞書」の魅力【3つ】
「小さなことばたちの辞書」を読んで感じた魅力は、次の3つです。
- 実在する辞書の歴史を学べる
- 主人公を取り巻く人たちが素敵
- 少しずつなにかを集めたくなる
ひとつずつ解説しますね。
① 実在する辞書の歴史を学べる
「小さなことばたちの辞書」は、実在する「オックスフォード英語大辞典」の編纂がもとになっています。
主人公は架空の人物ですが、辞書に関わった実在の人物がたくさん登場します。
辞書作りの裏側や関わる人たちの多さを知れるので、多くの学びを得られるはず。
面白い小説を読みたいけど、知識も増やしたいという人におすすめです。
② 主人公を取り巻く人たちが素敵
正直、「小さなことばたちの辞書」の主人公エズメには、あまり好感を持てませんでした。
けれど、エズメを取り巻く人たちは素敵な人ばかり。
1番素敵だと思ったのは、エズメの近所の家で女中として働くリジ―。
エズメより8つ年上の彼女は、エズメの姉的存在。
ときに厳しく、ときに優しいリジ―の行動は、読んでいる間、ずっとあたたかい気持ちにさせてくれました。
③ 少しずつなにかを集めたくなる
「小さなことばたちの辞書」では、主人公エズメが残しておきたいものを、少しずつトランクにつめていきます。
はじめは空だったトランクに中身がつまっていく様子を見ると、つい「自分もなにかを集めたいな」と思ってしまいました。
たとえば、本を読んで印象に残った文章や、思い出の写真、大切な本など。
落ち込んだときに、”大切なものボックス”みたいなものがあると、心が落ち着いて早く元気になれるのかもしれませんね。
「小さなことばたちの辞書」で印象に残った文章
「小さなことばたちの辞書」で1番印象に残ったのは、こちらの文章。
でも、失くしたってどれのことを言ってるのか、あたしは訊きたいのよ。だって、あたしが亡くしたのは息子たちだけじゃないんだもの。あたしは母親であることも、孫を持つ希望も失くしたの。ご近所との他愛ないおしゃべりも、家族とのんびり過ごす老後も失くした。
引用元:ピップ・ウィリアムズ(2022年)『小さなことばたちの辞書』小学館(405ページ)
これは、第一次世界大戦で息子たちを亡くした母親の言葉です。
読んだとき、つらくて胸がつまってしまいました。
人が亡くなるって、その人自身の未来だけじゃなく、その人に関わる人の未来も失くなるってことなんですよね…
それをまったく想像できておらず、頭をガツンと殴られたような衝撃を受けた文章でした。
「小さなことばたちの辞書」はこんな人におすすめ
「小さなことばたちの辞書」がおすすめなのは、こんな人です。
- 実際の辞書に関わる歴史を知りたい
- 辞書は人がつくっていることを、子どもに知ってほしい人
- 自分が残せるものはなんだろう…と悩んでいる人
「小さなことばたちの辞書」に登場する人の多くは、未来を見ていて、未来に残すもののために生きています。
明確な答えはありませんが、自分が未来に残したいものを考えるきっかけになるはず。
物語を通して、辞書やイギリスの歴史やを学べるので、お子さんにもおすすめです。